『認知症の人の心の中はどうなっているのか?』佐藤眞一著

book review

ブックレビュー

こんにちは。
今回は、「認知症の人の心の中はどうなっているのか?」です。
“アルツハイマー病真実と終焉”を読んで、もっと 認知症の内面的なことを知りたいと思い読んでみました。
認知症の症状や原因についての知識が乏しい私にとってとても分かりやすく、有益な情報がたくさんありました。

認知症の症状、またその背後にはいろんな理由があるその内容がとても驚きでした。

例えば、「認知症になると、非言語コミュニケーションも低下する」とあります。
その非言語コミュニケーションの低下の代表的な症状として、以下のように記されています。

・静かにするべき時に大声で話したり、楽しい雰囲気のときに場をしらけさせるような話し方をしたりするなど、その場の状況に合わないしゃべり方をする。
・会話の反応が遅い。または、相手が話し終えないうちに反応するなど、反応速度に問題
 がある。
・一方的に話し続け、相手の様子を気に留めない。
・感情が推測できない、または感情がこもっていないような話し方をする。
・表情の変化が乏しい。
・過度に視線の接触を避ける。または、過度に視線を合わせる。
・話しかけているのにそっぽを向くなど、相手に違和感や不快感を覚えさせるような姿勢をとる。
・話し相手に過度に近づく。
・些細なことで怒り出すなど、感情のコントロールが困難で、コミュニケーションが取りにくい。
 ・・・(中略)・・・
 非言語コミュニケーションは、言葉のようにはっきり意識されず、しかも強い影響力を持つだけに、それが認知症によって変わることをしらないと危険です。
 認知症の人と会話をする際には、言葉だけでなく、口調や態度なども認知症の影響を受けることを頭に置き、違和感や不快感を覚えたときは、「この人のせいではない」と考えるようにしてしてください。認知症の人は、あなたを不快にさせようとして、そのような態度をとるわけではないのです。

相手を不快にさせようとして、そのような態度をとるわけではなく、非言語コミュニケーションも乏しくなってくるという症状があることを理解しないといけないことがとても大事であることを知りました。このことを理解するだけでも認知症の方に対する対応に気持ちのゆとりができるかもしれません。

「認知症になると社会的認知が低下していく」の項目では、

認知症になると、言語・非言語を含めてコミュニケーションにズレが生じますが、その根底には、注意や記憶、見当識、社会的認識などの低下があります。
たとえば、同じことを何度も言って周囲の人をイライラさせることがよくありますが、その根底にはまず、物事を記憶する力の低下があります。・・・(中略)・・・
 さらに、情報処理能力が低下して、一度にたくさんの情報を処理できないために、あることが頭に浮かぶとそれだけを繰り返し考えるといったこともあります。
また、同時にあちこちに注意を向ける力も低下しているため、周囲の人に注意をむけてその様子を見ることも難しくなります。
見当識(時間、場所、人の認識)の低下も、会話のずれを生みます。・・・(中略)・・・
 そして、社会的認識の低下が、会話のズレに拍車をかけます。社会的認知とは、非常に広い領域を含む概念ですが、ここでいう社会的認知は、相手の表情や言葉、身振りなどから心の中を推察し、その場に合った適切な行動をとる能力をさします。
・・・(中略)・・・
ところが、認知症になると、社会的認知の低下によって、相手の心を推察することが難しくなります。・・・(中略)・・・
他者の表情を読むことも難しくなります。ただし、表情によって読み取りにくくなる度合いには差があります。認知症になると、怒り、悲しみ、恐怖を読み取る力は顕著に低下しますが、嫌悪と驚きはさほどでもなく、喜びはほとんどの人が読み取ることができるのです。・・・(中略)・・・
認知症の人は相手が怒っていたり、悲しんでいたり恐怖を感じたりしていてもよくわからないものの、嫌悪を感じたり、驚いたり、喜んでいたりするのは、ほぼわかるということです。ということは、認知症の人の言動に対して、こちらが怒ったり悲しんだりしてもあまり伝わらず、嫌悪感をあらわにすると、それは読み取られてしまうということ。・・・・・
その結果、介護する人は「自分の気持ちをわかってもらえない」と感じ、認知症の人は「自分は嫌われている」と感じ、関係がギクシャクしてしまうのです。

認知症の方は、怒り、悲しみ、恐怖の表情は読み取る力は低下するが、嫌悪、驚き、そして喜びの表情は、ほとんどの人が読み取ることができるというのは驚きでした。

喜びの表情を読み取る力は低下しないというのは、本来、人間、お互い嫌いあうことなく、笑って暮らすことが必要だからでしょうか。怒り、悲しみ、恐怖は生きていくうえでほんとうは必要のない感情なのでしょうか。
必要のない感情はないのでしょうが、怒りや悲しみ、恐怖は必要以上に読み取らなくてもよい感情なのかもしれません。
嫌悪感を読み取れるのは、相手に嫌われることのないように人間関係を保ちたい気持ちの表れで、喜びの表情を読み取る力が一番低下しないというのは、私たちすべての人にとっても言えることなのかもしれませんが 、認知症の方にとって喜びは、最も必要な感情だからなのかもしれない。と、私は感じました。
人生、たくさん笑って生きていけたらいいな。。。と思います。

また、ほかに驚いたことは、「認知症の方は周囲の人を“個人”として認識できない」ということです。